「もともと腰痛はあるが、そこ以外の場所にしびれが出ている。」
「歩行時の痛みを軽減させるために歩き方がおかしくなっている、これって坐骨神経痛?」
「お尻の中の方に痛みがあって、坐骨神経痛ではないかと言われた。」
坐骨神経痛とは・・
坐骨神経とは人の体の中で最も長くて太い末梢神経です。
この坐骨神経がこれからご紹介する原因によって刺激を受けると腰やお尻、太もも〜足の先までのしびれやだるさを感じるようになります。
また、坐骨神経と聞くと坐骨神経痛という病名があると思われる方もいらっしゃるかと思いますが、そうではありません。
坐骨神経痛は、何かの疾患の結果として坐骨神経が圧迫されてしびれや筋力低下を引き起こしている状態を指します。
原因不明のしびれや痛みに坐骨神経痛という名前が使われることがあるので混同されがちですが、そうではない。という事をまずは知っておいてください。
坐骨神経痛を引き起こす病気とは
●整形外科的な疾患
・腰椎椎間板ヘルニア
何らかの原因で椎間板の髄核が後方に脱出し、坐骨神経を圧迫して痛みやしびれが起こります。
神経根が圧迫されると、歩行障害がおこることがあります。
ヘルニアの合併による坐骨神経痛では、くしゃみや咳、排便時など力んだ際にも痛みをともなう場合があります。
このようにして、椎間板ヘルニアから坐骨神経痛が起こる可能性があります。
・変形性腰椎症
その名の通り、腰の骨が変形してしまうものが変形性腰椎症です。
好発は40代以降や高齢者であるとされています。
原因は加齢や同じ姿勢を長時間続けることによって腰に過度の負担をかけることと言われています。
腰や腰の周辺の筋肉や組織の柔軟性が低下していることも余計に筋肉の緊張を招き、症状の原因となっていると考えられています。
基本的に変形とは腰椎にトゲが出来ることを指し、この飛び出したトゲが坐骨神経に当たると痛みやしびれの症状が出るようになります。
症状としては特にお尻の部分に感じる坐骨神経痛の症状や側弯や後弯による姿勢の変化もみられます。
・脊柱管狭窄症
寝たり座ったりしているときには症状がないかごく軽度なのですが、起立したり歩いているとだんだん痛くなってきてそのまま歩き続けるのが困難になってきます。
歩行が困難になってきた場合は座ってしまえば痛みが治まってきてまた歩けるようになります。
このような症状を間欠跛行と言って、腰部脊柱管狭窄症に特徴的な坐骨神経痛の症状の出方です。
この他にも血流が低下しているような感覚や灼熱感、足底の皮膚の感覚異常なども脊柱管狭窄症の症状としてみられます。
・閉塞性動脈硬化症
動脈硬化が下肢に起こるとその先の血流が滞り、先ほどの脊柱管狭窄症のように歩いていると足にしびれを感じるようになります。
この症状を閉塞性動脈硬化症と呼びます。
こちらも歩くことによって足に行く血液の量が不足して坐骨神経痛の起こる坐骨神経痛のような症状が起こります。
しかし、閉塞性動脈硬化症は血管の血流障害の病気で整形外科的な坐骨神経痛とは少し異なります。
こちらも特徴的な症状として間欠性跛行があります。
脊柱管狭窄症と療法を合併することも珍しくはないので、きちんと診察を受けるようにしましょう。
・腰椎すべり症
その弯曲が何らかの原因で無くなってしまい、一部の腰椎に負担をかけた結果、腰椎が前や後ろに滑って行ってしまう状態になります。
これを腰椎すべり症と呼びます。
そのすべっている腰椎が脊椎を通る神経を圧迫し、坐骨神経痛を起こします。
発症が多い腰椎すべり症には腰椎分離すべり症と腰椎変性すべり症の2種類がありますが、坐骨神経痛の症状を呈しやすいのは前者の腰椎分離すべり症です。
30〜40代の男性に多く、椎骨と椎骨を支えている軸が骨折してしまうことで支えがなくなり、滑ってしまうのです。
・梨状筋症候群
この梨状筋がスポーツや何かにぶつけるなどの外力によって圧迫を受けるとその下を通っている坐骨神経も一緒に圧迫を受けて、しびれや痛みを引き起こします。
よく足を使うスポーツをされている方や最近お尻を行った記憶がある方は梨状筋症候群による坐骨神経痛の可能性があります。
また、梨状筋が硬くなることによっても坐骨神経痛の症状は起こります。
梨状筋が影響して起こっている坐骨神経痛の場合には姿勢や動きによって症状の出方が大きく変化します。
筋肉が緊張すると症状は強くなり、緩むと症状も和らぐのです。
ここまでにご紹介してきたような明らかな神経の圧迫や骨の変形があれば坐骨神経痛の原因は画像検査でも一目瞭然です。
しかし、このように筋肉の硬さが原因で起こっている坐骨神経痛はなかなか画像検査では見つけることが出来ません。
ですので、梨状筋症候群で坐骨神経痛の症状が出ている方で原因不明と病院で言われている方も多くいらっしゃいます。
画像の検査で原因不明だと言われた方はこの梨状筋症候群を疑ってみてください。
●内科的な疾患
・糖尿病
この合併症は糖尿病患者に多いとされており、坐骨神経痛もこの神経障害に含まれます。
靴下を履いているような感覚といった表現が使われることもあります。
このような状態が続き、症状が進行すると神経の働きが弱くなり、次第に痛みやしびれなどの感覚すら感じなくなります。
こうして例え小さな傷であっても細菌感染に気付かずに細胞が壊死し、足を切断しなければいけなくなった・・ということも糖尿病では少なくありません。
糖尿病による神経症状は高血糖によって毛細血管の血流が悪くなり、神経細胞に必要な酸素や栄養が不足するために起こる、という説などいくつかありますが、原因ははっきりとはしていません。
糖尿病が原因の坐骨神経痛の場合はそれ以上進行させないためにも糖尿病の治療に専念しましょう。
・帯状疱疹
帯状疱疹と聞くとピンと来ないかもしれませんが、帯状疱疹は初めてかかった際には水ぼうそうという名前で呼ばれます。
大人になってから免疫が低下した際に潜伏していた帯状疱疹の原因となるウイルスに反応することで帯状疱疹は発生します。
帯状疱疹の多くは50代以上に発症しますが、20代~30代の若い年代にも発症することがあります。
まずは皮膚症状の前に、体の奥の神経の痛みから始まり、その後、発疹や水ぶくれが神経に沿って帯状に現れます。
そのため初期には帯状疱疹に気付きにくいです。
帯状疱疹が原因の坐骨神経痛には
・じっとしていても常に痛みがある
・眠れないほどの激痛がある
・整形外科では原因が分からない
このような特徴があります。
また、帯状疱疹が関係している坐骨神経痛の場合には「帯状疱疹後神経痛」と言って、帯状疱疹を発症してから数ヶ月後にも神経症状が残ってしまう場合もあります。
こうなると治療に時間がかかってしまうこともあるようなので、心当たりがあれば整形外科のみではなく、皮膚科も受診するようにしましょう。
・骨盤内の腫瘍
実際の例でも長年坐骨神経痛を感じながらも放置していて気付いた時には骨盤内に悪性腫瘍が広がっていた、ということも報告されています。
骨盤内の腫瘍とはガンのことです。
また、骨盤での異常は脊髄という神経を通して脳まで運ばれます。
この伝達途中で「痛みは骨盤内ではなく坐骨神経で起こっているんだ!」と脳が勘違いを起こすことで坐骨神経痛の痛みを感じるという場合があるのです。
東洋医学的にみた坐骨神経痛
東洋医学的には
① 下半身の冷えによるもの
② 質のよくない油を取って、胆のうに疲れが出たとき
このようなことが原因で坐骨神経痛を引き起こしていると考えられています。
この場合、痛い部分はお尻でも胆のうと関係している太ももの部分に原因があることが考えられます。
上記は一例で、東洋医学では表に出ている症状のみを見るのではなく、全身のバランスをみて調整することで全体を整えていく、という考え方が根本的に存在します。
ちなみに漢方では坐骨神経痛は体内にある余計な水分によって引き起こされていると考えられています。
よって、治療の際には血行を良くするだけではなく、循環も改善するような漢方が使用されることが多いようです。
まとめ
長く薬を飲むことが改善策ではないこともあります。
もしあなたが原因不明の坐骨神経痛で苦しんでおられるのであれば、違う観点から原因を探して見てください。
治療法のことなどご質問があればお気軽に当院までご相談くださいね。